タブラの皮を張り替えました。
今回は左のでかい方、バヤンです。
右も左も叩く部分はヤギの皮で出来てます。
縦ヒモは水牛製で、上下のリングを交互に横螺旋状にボディに張り付いています。グッリていう木製のコマで皮の張りを調整して、ハンマーでチューニングします。
インドのタブラ工房では製作で余った皮を切り取ったのを野良犬がオヤツにします。最初はビックリしました。
表面の黒い丸はスヤヒっていって
鉄粉、米粉とかをまぜて塗り付けてます。
取り替えたばかりのは黒光りしてます。
タブラのルーツのパカーワジていうタイコは
チャパティを貼り付けます。インド人の主食のアレ。焼く前のパン生地みたいなやつ。
スヤヒは特別なレシピと熟練の技が必要で
日本国内では出来る人がいないので
スペア用に皮だけを用意してます。
このスヤヒ、よく見ると細かいヒビが入ってて
これが豊かな倍音成分を生み出します。
演奏する時につけるベビーパウダーや手汗などの水分が染み込み長年使用すると
ヒビが埋まってしまったり、欠けたりするので
どうしてもスヤヒが劣化するのは避けられません。劣化がすすむとサステイン(残音)が減退してきてタブラの音の魅力が薄れます。梅雨や湿気の多い時期には皮が破れることもあります。
かといって日本でタブラを購入すると
どうしても割高なっちゃうし、
現地の工房からハードケースに入れてもらって丸ごと買いたいところですが、輸送費もバカになりません。そんな感じで、ここ2年インドに行けてないので皮だけ現地の工房からまとめて取り寄せています。
見た目はほぼ同じですが、産地やメーカー、職人によってクオリティや値段も変わってきます。
ガラナと呼ばれる流派でサウンドの方向性が違い、職人はサウンドの流行や当地の有名な奏者の意見を取り入れたりしながら伝統の技で現代の音を作ります。
当たり前やねんけど
タブラ工房行くとよくタブラ奏者に出会います。
どっから来た?
何年くらいタブラやってるんだ?
師匠は誰だ?
今度コンサートやるから来るといい。
そんな会話がチャイ飲みながら繰り広げられます。
取り替える皮のリング部分が編み込まれてるのは東インドのコルカタ産、MuktaDasのRethmとかNarayan、デリー南のインドールの特徴。
対してデリー、バラナシ、ムンバイの多くは1方向に編まれてます。
はじめの写真右がバラナシ製、左がコルカタ製です。
古くなったり破れた皮を取り外して
新しい皮をセットして
縦ヒモを順番に通していくんですが、
実はこれがかなり重労働です。
バラナシのタブラ工房のおっちゃんが
その作業してる写真です。
両足で固定しながら両手で
思いっきり引っ張るのを
何回も繰り返さないといけないので、
途中から指がボロボロになって
力も入らなくなり感覚がなくなってきます。
うまくバランスよく力を均等にかけるために
少しずつ調整しながら工程をすすめていきます。
縦ヒモもチューニングの時に
ハンマーが当たったりして
ボロボロになるのでたまに交換しますが
新しいのは硬くて曲がりにくいので
なめしながらの作業はかなりやっかいです。
なので、最近ではジャンベで使われる
パラシュートのロープで代用したり、
専用の金属製固定器具を取り付けるタイプもあります。
10mくらいのヒモを少しずつ通していって、もし裏表を間違えたらそこまで戻ってやり直し。気をつけてても間違えることがたまにあるんですが、 一度編み込んだのを戻すのは かなり萎えます。
初めてやった時は半日かかりましたが
最近では色々工夫したおかげで
ひとつ2時間くらいで出来るようになってきました。でも、大変なのは変わらず、
出来ればやりたくないけど
気合いいれて頑張ります。
張り替えたばっかりの新しい皮は
気持ちいい透き通った音です。
使いこむと音が馴染んで丸くなり、
皮の色にも渋味が出てきます。
好みが分かれる部分もあるけど
個人的には、右は新品、左はしばらく使った後のが好みのサウンドなので
ここから練習で使いこんでいく予定です。
今回張り替えたのはコルカタ製Rethmのバヤン、
今後コンディションの仕上がりが良ければ
12月のCollection ていう京都で開催の
インド系音楽のイベントで使おうと思います。